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吉原ひろこ(食育研究家・料理研究家)
長年の教師経験を生かして提唱する食と教育の講演や、クッキングセラピー(料理を通しての心の癒し法)が注目を浴びている。現在「吉原ひろこの学校給食たべ歩記(あるき)」を朝日新聞に連載、給食の楽しいエピソードが話題を呼んでいる。食育その他の講演活動多数。 |
高まる学校給食の“存在意義”
![]() 私は料理研究家として、さまざまな食材と向き合ってきましたが、食材についての知識はあっても、それがどうやって作られているかということについてはほとんど知りませんでした。その食材ができあがるまでのプロセス、まさに“根っこ”の部分を知ることで、もっと深い、よいお料理ができるのではないかと思ったのがきっかけで、農業の現場にほど近い場所に移り住んでからもう8年になります。 そこでは、作物がどうやって育つのかということだけではなく様々なことが見えてきました。例えば、生産者の方々がいかにして給食とつながろうとしていらっしゃるのかということです。未来を育てる場所・学校で、子どもたちにごはんを食べてもらうという重要な役割を担う給食。そこにどうやって地元の農産物を入れていくのかというのは、まさに給食の“根っこ”の部分につながる、実に大切なことなのです。 そして、そんな学校給食の現場におじゃまさせていただいている「学校給食食べ歩き」も全国津々浦々、これまで私がうかがった学校は300を超えました。 そこで実感するのは、給食の存在意義とでもいいましょうか、それが以前より高まってきているということです。栄養バランスがよく、地産地消を心がけた食材を使い、子どもたちに食のよさを伝える指導もなされている学校給食。「食育」という観点からも注目され、これまでは日々の食生活における“縁の下の力持ち”のような存在でしたが、今ではその域を出てどんどん見直され、給食に寄せられる期待は大きくなってきています。 |
子どもたちの食意識を高めるごはん給食への試み
![]() 学校給食の現場では多様な試みが行われていて、各地で新鮮な驚きや感慨があります。
東京都内の学校のある日のメニューは「笹寿司」。これは新潟県の郷土料理ですが、「自分がよく知っていることを教えるのがいちばん」と、新潟出身の栄養士さんが郷里で食べていた料理を献立に取り入れました。笹の上に色とりどりの具が載った、目にも鮮やかなお寿司ですが、これを数百食分つくる調理員の方々にとっては、いつもの何倍もの手間と時間がかかっています。 給食に取り入れるのが難しいメニューに果敢に挑んだ福岡県の学校もあります。調理後、時間が経って教室に届く頃にはどろどろになってしまうと想定される「ぞうすい」。何度も試作を重ねて、ちょうどいいお米の硬さになるよう調理のタイミングを分刻みで算出し、ご当地の地鶏を使った「鶏ぞうすい」の献立を実現させました。教室で生徒が食べる頃合には、程よいアルデンテの食感になるよう計算して調理され美味でした。このノウハウはその後、「クリームリゾット」にも発展し、困難があってもあきらめずできるまでやってみよう、という調理員さんの熱意から生まれたメニューは生徒たちに大好評だったそうです。 熊本県の学校では、地元の特産品・馬肉を使った「馬肉どんぶり」に出会いました。子どもたちに、地元の食材を使った献立を募り、採用されたメニューだそうですが、子どもの嗜好に合っているだけでなく、馬肉は高たんぱく、低カロリーで非常にヘルシーなんです。牛肉ほど高価ではなく栄養価にも優れ、さっぱりしていてくせもなくおいしい。一緒に食べていた小学4年生の生徒が「馬肉どんぶりもいいけど、馬刺しのほうがおいしいよ」なんて言うんです。小学生でも、普段から馬刺しを食べているんだな、ということも垣間見えましたね。 また、北海道の学校では、地元特産の工芸品である木の器を給食に用いていました。飯椀、汁椀をはじめ、すべて木製の食器は子どもの手にも優しく、椀や箸の持ち方も自然とうまくなります。町をあげて地産地消の流れを作り、子どもの頃から地元の木の文化に日々触れてもらおうという試みが素晴らしいですよね。 このように、各地でそれぞれ意味を持った米飯給食が実施され、とても充実しています。 しかし一方では、以前より家庭の食が少しずつおろそかになってきているという現実もあるのではないでしょうか。 子どもたちに、給食を通して食文化にふれてもらうとともに、給食の現場で展開していることを保護者の皆さんにも広く知っていただく――家庭の食生活を見つめ直す機会はそこから生まれると思います。まずは学校から発信していきましょう。 |
学校と家庭、連携強化のためにできること
![]() 学校給食をめぐるパイプライン。大きく言えば「学校」「家庭」「自治体・行政」この三者をつなぐパイプのことですが、よい給食を提供するためには、どこも滞りなくスムーズに流れている状態にあることが重要です。その中でも、案外、コミュニケーションが取りにくいともいえる学校と家庭のパイプについて考えてみましょう。
栄養指導の一環として「給食だより」のような紙媒体の家庭配布は広く行われていると思いますが、実は読む人が本当は何を知りたいのか、というリサーチ不足で、保護者の意見の吸い上げがなされていない“一方通行”の状況に陥りがちです。相手のニーズを考えず、情報を発信するのみになってしまってはいないでしょうか。
例えば「家庭食」「暮らし全体」「健康食」などの設問にそれぞれ関連する単語をいくつかあげて書いておき、その中から優先順位をつけて選択してもらう回答形式にします。「給食」に限定しなくても、皆さんが普段気になっている言葉をひろってみるのもいいですね。 これらはほんの一例で小さなことではありますが、皆さんが普段やっていらっしゃることも、少し違う視点から見て工夫してみると、もっとご家庭との連携が取れるのではないでしょうか。 たった一枚の紙でも学校から家庭へとつながる素晴らしい食育を始められますし、地域によっては、学校給食に関する情報をケーブルテレビや携帯電話で発信するなど、メディアを活用した新しい試みを始めたところもあります。今、できることから始めて、皆で楽しく共有しながら連携強化を進めていきましょう。 |





