「給食はごはんの方が好き。カレーがすごく美味しいし、ビンバも大好きかな。僕はちゃんと残さないで食べてるんだから」
(1年生男子)
 
「学校栄養職員の関根先生のお話を聞いて、ごはんを中 心に、バランスよくおかずを食べていくことの大切さが分  かりました。岩手食材の日は、出前授業で来てくださった 方が作っているんだ…と思うと、より美味しいです」
(4年生女子)

「みんなと一緒にランチルームで食べるからかな?やっぱり、ごはんの給食が美味しいです。菜の花ごはんとかわかめごはんとか、まぜごはんも楽しみ!」
(1年生女子)
 
「去年は5月から大豆の栽培をしました。実際に育てて収穫 して豆腐を作るのが面白かったです。おみそ汁の豆腐もこんな風にしてできてたんだなぁ」
(4年生男子)

 平成15年4月に北沢小に赴任した田邊校長。東京都小学校給食教育研究会の会長を務めることもあり、食育を意欲的に進めておられます。
「全校児童は179名(平成17年度)、全学年が単学級です。校長としての自慢は、都心にありながら落ち着いた教育環境を実現できていることですね。本校は平成16年、17年度において『いわて食育』首都圏交流事業のモデル校になりました。これは岩手県が取り組んできた地産地消の成果を生かすものです。具体的な試みとしては、全学年で年間一回ずつ出前授業を行いました。岩手県の生産者を招いて行いますので、食料生産の仕組み、尊さを子どもたちに伝えられたと感じております。また、月2回は学校給食に『岩手食材の日』を設け、岩手県の豊かな食の一端を子どもたちに体感してもらっています」
 夏休みを利用して「いわて食材探検ツアー」も実施。希望した50名の児童、10名の保護者が農家での宿泊を体験しています。
「子どもたちは岩手の自然はもちろん、農家の方々のあたたかさに接したようです。五感を通じて農業を体感したようです。それ以外にも、シイタケの出前授業に来ていただいた佐々木久助さんも子どもには大人気で、今でも“久ちゃん”と呼んで親しんでいます」

「食育と道徳は同じ」というのが田邊校長の持論。どちらも、すぐには指導結果が出ないが、おろそかにすれば、将来、心と体の健康に影響を及ぼすというのです。平成17年度からは、教育課程に「食に関する指導の充実」が盛り込まれ、食に関する様々な教育活動が推進されています。ここでは、米飯給食に対する熱意を伺ってみましょう。
「給食の主食としては、ごはんを中心として、パンが時折入ってくるようなペースが理想ですね。私としては、週4回が米飯でもいいと思っています。アクセントとしてパン、麺類が1回は入っていいですが、主にごはんであるべきでしょう。私がそう考える理由は二つあります。第一に、今は朝食はパン食という家庭が増えています。ですから、日本の食文化を考えた時、給食でごはんを習慣づけていくことが大事だと思います。第二に、日本の農業を守ることにつながるということです。食料の自給率が低く、外国からの輸入に頼っている今の日本の現状は、将来を考えた時、恐ろしいものがあります。これからの食育は、家庭への啓発が不可欠です。子どもの食学習を家庭に発信することで、食育はより多面的に進められるでしょう。親子が一緒になって行う食育のために、給食は生きた教材の役割を担っています」
 
 学校栄養職員の関根美知子先生が2年前に赴任して以来、北沢小学校の食育環境は一変したそうです。もちろん、児童たちにも大きな変化がありました。
「米飯の回数増をはじめとする給食の充実、食育授業の実践。関根先生が来てからの2年は、目に見えて大きく変わりました。子どもたちに聞いてみても『学校の行事が楽しい』という回答が増えてきています。食育を踏まえて、より魅力ある学校に変わってきたのではないでしょうか」

 平成16年の赴任以来、学校栄養職員の関根美知子先生は北沢小学校における食育活動の核となって取り組んでこられました。2年間の食育の成果を聞いてみましょう。
「以前は週2〜3回が米飯給食だったようですが、私が献立を作るようになってからは、週3〜4回に増やしました。何より、岩手首都圏交流事業の存在も非常に大きかったですね。岩手に興味を持つ子どもが増えました。やはり私は生産者を知ることが大事だと思っています。つまり、農作物を作られる方の顔が見える“食”を教えられているんです」
 世田谷区にも畑はありますが、給食の食材に起用するのはなかなか難しいようです。
「その分、交流の深い岩手県で『岩手食材の日』を月2回設けており、食料生産に対する関心、理解も深められています。シイタケの出前授業ではホダ木100本を校庭に設置。子どもたちで力を合わせて3.2kgを収穫し、みそ汁、いものこ汁などの給食材に活用されました」
 これまではパックに入ったシイタケしか見たことがない子どもたち。大きいシイタケに目を輝かせて収穫を楽しみました。それまで苦手にしていた子どもも、口に運ぶようになったそうです。
「今後も本物の食材、本物の味を子どもたちに提供するように努力していきたいと思っています」

 関根先生の食育活動には共鳴する点が多いという神野先生。担任教師として、授業カリキュラムに関連した食育の可能性を探っておられます。
「学校栄養職員が核となって食育を進めている本校のパターンは理想的だと思います。米飯給食は子どもたちも楽しみにしていますし、5時間目の授業も非常に充実して迎えられます。担任としても、ごはんのよさを理解してもらうように微力ながら努力していきたいですね」
 
 授業カリキュラムにおいても、積極的に「食」への関連性を持たせている北沢小学校。もちろん、神野先生も意欲的なアプローチを続けています。
「最もチャンスがあるのが、私が受け持っている4年生ですね。『山で暮らす』というテーマで東京都檜原村のコンニャクを紹介したり、八丈島のトビウオが給食に登場したら、都の島の学習に結びつけられます。子どもたちは八丈島の漁業関係者と手紙の交換をするなどして理解を深めていましたね。学習で学ぶことを『食』に結びつけていくのですが、その中で必ず、生産者である『人』を考えさせるようにしています。やはり、子どもたちを『人』とつなげていくのが食育だと思っていますからね」