『ごはんで給食メニュー講座』第1部「知っ得?ナットク!セミナー」では、吉原ひろこ先生(食育研究家・料理研究家)をお迎えし、“学校給食のすばらしさ・食育の大切さ”をテーマに、学校給食の現場で感じたこと、発見やアドバイスなどエピソードを交えてお話していただきました。自身が「学校給食応援団」として学校をまわるねらいや想い、ごはん給食を通じて食育の輪を学校給食関係者、家庭へとどう広げていくかなどたくさんのヒントをいただきました。

吉原ひろこ (食育研究家・料理研究家)

長年の教師経験をいかして提唱する食と教育の講演や、クッキングセラピー(料理を通しての心の癒し法)が注目を浴びている。現在「吉原ひろ子の学校給食たべ歩記(あるき)」を新聞に連載、給食の楽しいエピソードが話題を呼んでいる。食育その他の講演活動多数。

 私は料理研究家として活動していますが、自他共に認める「学校給食応援団」でもあります。常々、学校給食の素晴らしさ、底力を広く伝えたいと思っていたんですよ。
 以前は、家庭の食事がベースで、学校給食はあくまで付加された食事にすぎませんでした。でも、現在は栄養職員の皆さんの努力で、栄養バランスが考え抜かれています。学校給食は1日3食のうちの1食ではありますが、子どもが毎日食べている中でもベストの食事になっているのではないでしょうか?
 
 料理研究家という仕事柄、「学校給食の献立を考えてほしい」「ごはん給食のヒントを教えてくれないか」という依頼も多くあります。私なりに考えておりましたが、やはり現場をたくさん知っておかないと、実践的なアイディアを出してはいけません。全国には3万4千校以上もの小中学校があります。きっと、私が見たこともない献立、創意工夫がそれぞれの学校で行われていることでしょう。「子どもたちと一緒に食べてみなきゃ分からないことがあるはず!」。そんな決心のもと、私の学校給食たべ歩きが始まりました。栄養職員の方々が全国各所で行っている給食現場の知恵を発信し、皆さんたちとつないでいく。それが「学校給食応援団」のねらいだったんです。

 この「学校給食たべ歩き」の試みは、まず献立表を全国の栄養職員の方々に送っていただくことから始まりました。本当に、新鮮な驚きがたくさんありましたよ。じゅんさいや珍しい海草「めひび」をメニューに使っているところもありましたし、沖縄では「タコライス」という、数年前は耳慣れなかったメニューが当たり前に献立に載っていることも分かりましたね。
 初めて学校給食を実食したのは、三重県にある小学校です。米どころだったせいか、週5回がごはん給食でしたね。そこで驚いたのは、生徒が学校に持参してくる米を集めて炊く、というユニークなスタイルでした。農家が多かったので、給食費を物納していた慣習のなごりでしょうか。さっそく教室で食べさせていただいた私は「美味しいね。いつもこんなごはんを食べているみんながうらやましいな」って話しかけたんですね。そうしたら子どもたちは「お家のごはんの方が美味しいよ。だって、先生が持ってきた米はスーパーで買ってきたものだもん。それが混ざっているからいまいちだね」って言うんです。ごはんの違いをちゃんと分かっているんですね。家族が大切に作ったお米を、子どもたちも同じように大切に食べているんでしょう。
 
 また、ある学校ではフキの葉で煎り大豆入りごはんを包んで食べる「さびらきごはん」というメニューを目にしました。これは農作業の合間に食べられるように工夫された郷土料理です。別の学校に行ったときは「ビビンバが一番人気」と聞いたのですが、そこでは地元のJAから牛一頭が給食用に贈呈された、というエピソードもうかがいました。
 今考えてみると、地域に根ざした食育が私の印象に強く残っているんですね。それはやはり、ごはん給食だからこそ伝えられたものではないでしょうか。
 ごはんを中心に献立を組み立てていくと、必然的に味噌、醤油を使った和風のおかずがメインになってきますよね。そう、今注目されている日本型食生活、日本のスローフードを子どもたちに伝えていくには、ごはん給食が最適なんです。
 
 子どもたちに顕著な「ばっかり食べ」も、おかずへの一工夫でだいぶ違ってきます。ごはんの残る量が多いと言われる唐揚げでも、あんとからめてとろみをつけたらパサパサしません。口の中でごはんとおかずを合わせる「口中調味」が自然にできるようになります。こうした一工夫をすることで、子どもたちにごはんを美味しく食べてもらえるはず。子どもたちが小さい時に、ごはんを中心とした日本型の食事を一生懸命インプットしていくことで、ごはんをずっと食べていくベースができるんです。

 しかし、食育を進めていくには、まだまだ課題が残っているでしょう。給食時間の教室で話をしたり、学級活動や教科の中で食育について指導していく。これもまた、学校栄養職員の仕事です。まずは、どうやったら食育に向かって学校全体を動かせるか?を考えていきましょう。そこで提唱したいのが「学校給食をめぐるパイプライン」です。これは、栄養職員、校長、担任、調理員などの学校現場と家庭、自治体・行政との関係をラインで示したもの。このパイプラインが良好に巡らされていたら、給食全体が良いものになっていきますし、何より美味しい給食が子どもたちに届けられるはずです。もちろん、現状ではすべてうまくいっている、というわけにはなかなかいかないでしょう。私が一番力を入れてほしいと思っているのは、栄養職員と担任の先生のラインです。献立を考え、給食を作る側がいくら考えをこらしていても、そのインフォメーションが教室の子どもたちに届かない場合もあるからです。校内放送で給食のことを話しても、教室がうるさかったり、先生が別の話をしていては伝わりませんよね。そこで食育の導線がプツンと切れてしまうんです。担任の先生も一緒に「学校給食応援団」にして、子どもたちに近い食育を進めていきましょう。
 
 そしてまた、家庭にはたくさんの情報を届けてあげることが必要ですね。以前は学校での食育、家庭での食育が分けて考えられていましたが、これからの食育には学校・家庭の連携が必要になってくるからです。学校給食の素晴らしさを家庭にも広げて、いい影響を与えていきましょう。家庭でごはんのメニューが少なくなり始めている今、ごはん給食の良さを積極的にアピールしていきたいですね。私が聞いたところによると、保護者の方からは「栄養職員の顔が見えない」という意見も多いようです。献立表をはじめとして、栄養職員が家庭に発信できる情報は少なくありません。これまでの経験に基づいた自分自身の言葉で学校給食をアピールしていけば、必ず伝わるはずです。雑誌の編集長になったつもりで、顔の見えるメッセージを伝えていきましょう。
 プロフェッショナルの栄養職員の方々には様々なごはん給食のアイディアがあり、個々の現場に合わせた実践が行われているでしょう。ごはん給食の大切さをアピールするべく、私も「学校給食応援団」としてお役に立ちたいと考えております。全国各地での取り組みを横に広げ、意欲的につなげていきましょう。