開催日時:平成18年2月5日 場所:川崎市国際交流センター (神奈川県川崎市)
服部幸應(学校法人服部学園理事長・校長/医学博士)
食文化の第一人者としてテレビでもおなじみ。厚生労働省、農林水産省、文部科学省による「健康づくりのための食生活指針策定検討会」などの委員を歴任。政府の「食育調査会」アドバイザーも務める。安全で安心で健全な食生活を送るための「食育」を啓発して、藍綬褒章、厚生大臣表彰、文部大臣表彰およびフランス政府より国家功労勲章を授与されている。
私は栄養士と調理師の育成をする学校をおこなっております。17年ほど前になりますかね、ふと思い立って、一週間の食事日記を新入生たちに提出させました。ところが、その日記を見て、もう愕然としましたね。朝食抜きであまりにも食生活のバランスが悪い人が多い。そして2年後、卒業前にも同じように1週間の食事日記を提出させました。さぁ、2年間の勉強の成果はどれぐらい出たでしょうか?……答えは6%。理想的な献立について問題を出すと、80〜90%は正しい献立を出してきます。そう、頭では食生活バランスの大事さは分かっているんですよ。でも、自分の食生活、食習慣は18、20歳になったら変えられませんね。では、何歳ぐらいから食習慣をつけるべきでしょうか? 私が様々な研究を進めた結果、8歳までという結論になりました。8〜10歳というのは脳細胞、脳神経が非常に発達して、好奇心が旺盛になってきます。そして、7歳から16歳ぐらいまでが骨を作る期間。こういう時には、バランスのいい食生活を子どもたちにさせなければいけません。これは親の義務だと私は思います。しかし、その親御さん自身がバランスの悪い食生活をしている。これでは教えるどころか、親御さんがもう一度勉強をしなくてはいけませんね。さらに言うと、学校教育の中にも食育の要素は欠落しています。そういう欠落した環境の中で、食育を進めていくには、義務教育の指導要領にきちっと食育を組み入れてほしい、ということを食育推進基本計画検討会などで私は提言しております。
今から40年前、日本の食料自給率はカロリーベースで73%でした。現在、40%にまで落ちています。ヨーロッパを見てみましょう。40年前には46%しかなかったイギリス。今は77%ぐらいありますね。68%だったドイツは93%ですね。フランスは104%超えていましたが、今では130%もあります。みんな、食料は自分の国で作ろうということになっているのです。では日本はどうでしょう。残飯が世界一ですね。年に一人あたり171kg、EUの実に4倍も出しています。日本は年に6700万トンほどの食材を輸入していますが、料理にして720万トンも捨てています。金額にすると11兆1千億円。自給率40%を金額に換算すると12兆4千億円ですから、国内で生産しているものの9割近くを捨てている計算になりますね。 去年の愛知万博にいらしたケニアの環境副大臣、ワンガリ・マータイさんは「MOTTAINAI(もったいない)」という言葉を広めましたね。私は「なぜ日本語で言うんですか?」と聞いたんですよ。そうすると、「この言葉は素晴らしい。英語のreduce、reuse、recycle。この3つの意味を一つで言い切るのがMOTTAINAIなんです」とおっしゃいました。僕が子どもの頃は、ごはん粒一つでも捨てると「もったいない!」って言われましたね。食料自給率、残飯……一つ一つ見ていくと、やらなきゃいけないことはたくさんあります。MOTTAINAI。ちょっと頭の隅に置いておいていただけるとうれしいですね。
日本人はお米を食べなくなりましたね。今から40年前、一年間で一人あたり112kgを食べていたのですよ。その昔は一石、150kgが目安でした。現在の我々はどうでしょう。年間に食べる量は60kgを切って59.5kgぐらいですね。そもそも、今の食生活というのは、あまり日本人に合ったものじゃありません。穀物を食べながら、たまに肉や魚を食べていたのが代々の日本人なのです。欧米人に比べて60〜70センチほど腸が長い。もう消化器官の構造が違うんですよね。 キレてしまう子どもを僕は18年間、警視庁、少年院などでずっと追いかけてきました。彼らの食生活は8割がお砂糖中心。ごはんとの割合が完全に逆転していますね。マウスの実験でも、日本型の食生活をしたグループは生活習慣病になりにくい、という結果が出ています。お米を食べてきた我々には、そのDNAがすり込まれてきているんです。お米はもっともっと食べなきゃいけないと思いますね。