開催日時:平成17年11月2日
場所:神戸市産業振興センター
(兵庫県神戸市)

砂田登志子(食生活・健康ジャーナリスト)

ニューヨークタイムズ東京支局記者、ボストン・コンサルティング・グループ研究員を経て1973年に独立。欧米における食育事情の取材、新聞・雑誌への寄稿、テレビ・ラジオ出演、全国での講演などで幅広く活躍。BSE問題調査検討会委員、食育推進会議専門委員など、農林水産省、文部科学省など各省庁で食、健康教育に関する委員を数多く務める。

 「私の心も身体も食べ物からできている。食べた物があなたよ、食べた物が私よ」。これは安藤昌益の「食は人なり」ということです。そういったことを子どもにどう教えたらいいんでしょうか。
 平成17年の6月に食育基本法が参議院を通過しました。これは結構難産でして、4年もかかりました。今、私は小泉純一郎首相を議長とする食育推進会議の専門員を務めております。会議は、第1回目から実にいろいろな意見が出ております。日本はこれから体育以上に、食育に力を入れていくと思われます。
 さて皆さん、1月17日がおむすびの日だということを知っていますか? 知っている人は少ないですよね。それもそのはずです。どの新聞を読んでも食のページがありません。スポーツ欄は3〜4ページもあるのに、おかしいと思いませんか?私がこういう運動をやらなきゃ!と思ったのは、大学を出てニューヨークタイムズに入ってから。そういう、日本での食の軽視に気がついたんです。なぜ栄養学博士がいないのか、という問題もあります。世界一の長寿国・日本で、なぜ食が重視されていないのでしょう。そういった身近な問いかけから始めていくのが「食育」なのです。

 今の子どもは、とてもキャラクターに慣れ親しんでおります。ですので、子どもたちに食育を進めていくためには、かわいくなければ駄目なんです。食、ごはんに関心を持たせるのは、子どもが小さければ小さいほど、離乳食からの方がいいですからね。ですので、私は抱っこできるお人形、いろんなキャラクターで子どもたちにお話をしています。字が読めない、数が数えられない子どもにも食文化に関心を持たせるためには楽しくお話を進めることが不可欠。例えば、お箸の話をする際は一寸法師、「お椀の船に箸のかい」といった話をしていくと、子どもたちは目を輝かせて聞いてくれます。ビタミンやミネラルやら…見えないものの話をするより、絵にして話を進めていくのがいいんです。
 そして私が薦めているのが、古代人のアニメである「漢字」を使って食育しよう、という運動です。
 まず、「御」がついていることでも分かりますように、日本人のごはんというのは私たちの歴史・文化・文明です。皆さん、
米偏の字をいくつ書けるでしょうか?料、精、粘、籾、粕、糠…
いろんな字がありますよね。米が昔から大変身近なもので
あったことが分かります。そういったことを気づかせていくのも
「ごはんで給食」運動の一環ではないかと思います。
 皆さんは何となく「おむすび」って言っているかもしれませんね。あれは「結んで開いて、手を打って結んで」の「結ぶ」からきているんです。親子を結ぶ、家族を結ぶ、心を結ぶ、神戸を結ぶ、兵庫県を結ぶ…その「結ぶ」なんですよ。それほど大切な意味が「おむすび」には込められていたんですね。では、「結ぶ」の反対は何でしょう? それは「切れる」なんですよ。今、キレる子どもの問題はとても深刻になってきていますね。この「ごはんで給食」は、「むすぶ」運動だと思ってください。元気で健やかに、すくすく子どもたちを育てる運動なんです。

 私たちは命、動植物という命を頂いて命を長らえています。その命がないと日本の未来もないわけですよね。明日を担う、未来を担うのが子どもです。私たちの未来は食で成り立っていく、ということを再認識してください。
 栄養の「養」を見てみましょう。これは脱穀精白した米、麦、ヒエ、アワなどの穀物なんです。食べるっていう字からピュッと伸びたのはレンゲ、さじなんです。その上は羊ですね。羊は「私に代わって羊を捧げる」という意味で、動物食の代表です。つまり、穀物食と動物食を上手に組み合わせて食べることを表すのが「養」。長い歴史を
持った不思議な字ですよね。